みなさんこんにちは! 元素さんです!(✿゚▽゚)ノ
今回は雑記第2弾という事で!多くのフォロワさんから要望があった話をします。
Xbox(One S/One X/Series X|S)でイヤホン・ヘッドホンを使う場合、以下の4種類のオーディオから選択することになります。
- 非圧縮ステレオ(空間オーディオを使わない普通の再生)
- Windows Sonic for Headphones
- Dolby Atmos for Headphones
- DTS Headphone:X
4種類もあると、どれを使えば良いのか迷いますよね。そこで今回は4つのうち代表的な2つ、Windows SonicとDolby Atmosについて比較します。
※DTS Headphone:Xについては情報源が少なかったため今回は割愛します。
目次
まず必要となる前提知識を幾つか紹介させていただきます。まずはサラウンドや立体音響について。
一般的なテレビや端末は、その筐体にスピーカーがあり、そこから音が来ます。しかし、現実世界では私たちの正面だけから音が鳴るわけではありません。言わずもがな、横や後ろや上など、あらゆる方向から音が鳴ります。

より現実に近い、臨場感がある音を表現するために登場したのがサラウンドです。画像のように視聴者の周囲を取り囲むようにスピーカーを配置します。これにより周囲360°の音は表現できるようになりました。

音響環境をさらに拡張しようとして登場したのが立体音響です。サラウンドは水平方向の音は表現できますが、スピーカーの配置の高さに高低差がありません。拡張するなら高さ方向だということで、天井など高所にスピーカーを設けたのが立体音響です。
チャンネル数はサラウンド環境ではスピーカー、つまり音の発生源の数を示します。例えば5.1chや7.2.4chのように、複数個の数字で表されます。一つ目の数字が従来のサラウンド環境に用いるスピーカー(これをフロアと言います)の数、二つ目がサブウーファー(重低音用スピーカー)の数、三つ目が立体音響で用いる高さ方向のスピーカー(ハイトと呼称されます)の数です。
スピーカーの数は合算して表記されることもあります。このブログでは曖昧さ回避のため、スピーカー数を合算せず表記します。例えば5.2.4chを9.2chと表記する事は無く、9.2chと表記する場合は「フロア9つ、サブウーファー2つ、ハイト無し」を意味します。
Dolby Atmosとは、Dolby Laboratories社が開発した音声記録方式とその再生方式を指します。詳細に紹介するとそれだけで記事が1つ以上必要になるので、ものすごーく雑に紹介します。この記事を読むにあたって必要な特徴は、以下の3つです。
- 従来のサラウンドを拡張し、天井にスピーカーを擁する立体音響。
- 最低要件は5.1.2chで、基本形は7.1.4ch。家庭用は最大24.1.10ch。
- 3.1.2chなど最低要件を下回る環境でも、機材が対応していれば再生できる。
- 従来の記録方式に加えて、新たな記録方式を採用している。
- 従来の記録方式は、「どの音をどのスピーカーから出すか」を記録する「スピーカーベースオーディオ」
- 新たな記録方式は、「どの音がどこに位置するか」を記録する「オブジェクトベースオーディオ」
- 同一のAtmos音源を、ホームシアターからヘッドホンまで様々な機器で再生できるよう再生方式が充実している。
- 少し前のBlu-rayなどで、ホームシアター用音声とヘッドホン用音声を別々に収録する事例があった。
- Dolby Atmos for Headphonesは、Atmos音源の再生方式の1つ。
さて、前提知識が出そろったのでようやく本題に入れます。Dolby Atmos for HeadphonesとWindows Sonic for Headphonesの動作の違いを、3つのパターンで比較していきます。まずは、サラウンドではなくステレオ(2.0ch)の音声を再生してみます。
Windows Sonicの場合、空間オーディオを使わない非圧縮ステレオとの違いは全く感じられませんでした。
一方でDolby Atmos for Headphonesで再生すると、音の解像感が良くなります。個々の音が聞き分けやすいです。また、通常の再生と比べるとほんの少しだけ音の広がりを感じます。
この違いの理由はアップミックス(上位変換)の有無です。Dolby Atmos for Headphonesには、非Atmos音源をAtmos風に変換するアップミックス機能が搭載されているそうです。おそらく、設定画面にある「サラウンドバーチャライザー」がそれでしょう。逆にWindows Sonicには、ステレオ音源をアップミックスする機能が無いようです。
続いてDolby Atmosではない従来のサラウンドに対応したコンテンツを視聴します。非圧縮ステレオではヘッドホンの左右のドライバを結ぶ直線上にのみ音が定位していましたが(一般的によく言われる「音が頭の中から聴こえる」という現象です)、Windows Sonicでは前方の音と後方の音が明確に区別されています。音が前後左右どこから鳴っているかわかるということは、普通のステレオ音源ではなく5.1chか7.1chの音声を再生していると思われます。
5.1chや7.1chの再生においては、Windows SonicとDolby Atmos for Headphonesの違いはわかりにくいです。しかし注意深く聴き比べると、音の広がりなどで違いが感じられると思います。とりわけ、雨音や建物内で音がした時の反響音はDolby Atmos for Headphonesの方が臨場感があります。
今回の検証で私が最も気になっていた事は、Windows SonicでDolby Atmos音源を再生できるのかという事です。Microsoftの開発者向けドキュメントによると、Windows Sonicはベッド8.1.4.4chまで再生できるとの事。つまりサラウンドかつ立体音響である音を再生できると考えられます。
しかし実際にAtmos対応作品をWindows Sonicで再生すると、従来のサラウンド音源を再生した時と変わりません。とりわけ、音の位置に高低差が感じられません。Dolby AccessアプリでAtmosのデモ動画を再生すると「Dolby Atmosで再生されていません」と表示されます。どうやらWindows Sonicは、Dolby Atmos音源ではなく5.1chや7.1chなど従来のサラウンド音源を再生してしまうようです。
検証の最後に、Dolby Atmos音源をDolby Atmos for Headphonesで再生してみました。さすがにホームシアターシステムの音には遠く及びませんが、音がヘッドホンよりも外側に位置するので驚きました。頭部から6cmぐらいの距離に音があり、音の動きや方角もわかりやすいです。これは非Atmos音源を再生したときには感じられませんでした。「餅は餅屋」と言う通り、Dolby Atmos for Headphonesの性能を最大限に発揮するにはDolby Atmosに対応したコンテンツが一番ですね。
多くのイヤホン・ヘッドホンは左右一つずつしか音声発生源がありません。どうしてサラウンド音声やAtmos音声を再生できるのでしょうか?
それを実現するのが疑似サラウンドです。ざっくりいうと人間の耳が音の位置を感知する仕組みを利用します。耳の錯覚を引き起こすことで、あたかも様々な方角で音が鳴っているかのように聴こえさせる技術です。
Windows SonicやDolby Atmos for Headphonesがサラウンド音声を再生できるのも、基本的には疑似サラウンドに類する技術を用いています。様々な方角から音が聴こえるようで、それは耳の錯覚であり実際には音は左右一対のドライバから鳴っているのです。言い換えれば、本来多数のスピーカーが必要なサラウンド音声を、疑似サラウンドによってイヤホン・ヘッドホンで再生できるように変換していると言えます。
さて、その音声変換処理をどこで行っているのでしょうか? コントローラーにその仕組みがあると誤解している人がいますが、それは現実的ではありません。なぜならXbox本体とコントローラーを結ぶ無線接続では、XboxのAtmos音声を伝送できるほどの帯域幅がありません。
音声変換処理はもちろん、Xbox本体側で行われています。Xbox(One S/One X/Series X|S)本体には、ゲームの処理用とは別にオーディオ専用のプロセッサが内蔵されています。ここで音声変換処理を行い、イヤホン・ヘッドホンで再生できる形式に変換します。変換後の音声は非圧縮ステレオと同様に伝送できるため、無線やイヤホンジャックでも問題ありません。
変換済みの音声が届くため、コントローラーやヘッドホンは何も手を加える必要はありません。ただXbox本体から送られてくる音声を再生するだけで良いのです。
せっかくXboxのヘッドホン用空間オーディオについての記事を書いているので、ついでによくある誤解についても書いておきます。
【処理性能への影響】
とある捏造記事に「Xboxで空間オーディオを使用すると、その分処理性能を割いてゲームソフトに使用できる処理性能が減じる」とありますがこれは誤りです。オーディオ専用のプロセッサがあるので、音響処理はゲームの処理に影響しません。
【Dolby Atmos内蔵コントローラー】
非純正の周辺機器に「Dolby Atmos内蔵」を謳うコントローラーがあります。ヘッドホン用空間オーディオはXbox本体のオーディオプロセッサで音を完成させてからヘッドホンなどに伝送するので、コントローラーが何かする余地はありません。一体コントローラーが何をするというのでしょうか? このコントローラーにはDolby Atmos for Headphonesの利用券が同封されているので、そのことを「内蔵」と誤記したのでしょう。
【Dolby Atmos対応ヘッドホン】
そんなものは存在しないと言いたいです。Dolby Atmos for Headphonesは、ステレオ再生が可能なあらゆるイヤホン・ヘッドホンを使用する事ができます。対応が明記された製品にこだわる必要はありません。お好きなイヤホン・ヘッドホンを使いましょう。極めて稀ですがホームシアター用のDolby Atmos音声を再生できるヘッドホンも世の中にはあるので、強いて言えばそういうのを「Dolby Atmos対応ヘッドホン」と呼ぶのかもしれません。
【ヘッドホンのエフェクトやイコライザ】
高価なヘッドホンにはエフェクトやイコライザが搭載されていますが、空間オーディオ使用時はそのような音声補正機能は使ってはいけません。多重に音声処理されて、意図せぬ動作になってしまいます。Dolby Atmos for Headphonesにイコライザが含まれているので、それだけを使いましょう。
【HORIのネックスピーカー】
HORIの「3D Surround Gaming Neckset for Xbox Series X|S」は「3D Surround」から空間オーディオを想起させますが、よく見ると空間オーディオとの関連性は明記されていません。本製品には何らかのエフェクトやイコライザが搭載されているようで、空間オーディオとの相性が不安になるところです。
【Xbox OneのHDMI IN】
Xbox OneのHDMI INに他のゲーム機を接続し、そのゲーム機の音声にDolby Atmos for Headphonesをかけようとする人がいます。XboxのHDMI INはNintendo Switchなどの5.1chサラウンド音声に非対応など幾つか問題があり、あまり実用的ではないでしょう。
今回比較したXboxのヘッドホン用オーディオを比較するとこのようになります。
|
非圧縮ステレオ |
Windows Sonic |
Dolby Atmos for Headphones |
使用料金 |
無料 |
無料 |
1650円(試用期間あり) |
ステレオ音声の再生 |
普通に再生 |
普通に再生 |
アップミックス + 疑似サラウンド |
サラウンド音声の再生 |
再生不可 |
疑似サラウンドで再生 |
アップミックス + 疑似サラウンド |
Dolby Atmos音声の再生 |
再生不可 |
再生不可 |
疑似サラウンドで再生 |
Dolby Atmos for Headphonesの方が機能が充実していますが、Windows Sonicには使用料金無料というメリットがあります。Dolby Atmos for Headphonesには無料試用期間がありますので、聴き比べてから選びましょう。
最後に、今回の記事で覚えてほしい点を箇条書きでまとめます。
- Dolby Atmosはサラウンドを拡張した立体音響。
- ヘッドホン用空間オーディオは疑似サラウンドを用いて、音声をイヤホン・ヘッドホンで再生できるように変換している。
- 疑似サラウンドは様々な方角から音が聴こえるようで、実際には耳の錯覚。
- 空間オーディオにエフェクトやイコライザを重ね掛けしてはいけない。
当初は雑記のつもりで書いていたんですけど、気づけば6000字。マニアックになりすぎず、かと言って情報不足になりすぎずを狙いました。この記事がみなさんのゲームライフに役立てば幸いです。